声の棲む部屋
2025 | Installation

Overview
2025年度国立音楽大学芸術祭での展示に向けて制作された体験型インスタレーション作品である。コンピュータ音楽研究室有志の非公認コミュニティ「オカルト研究創造会」によって企画、制作、公開された。 下記は、本作のコンセプトおよび体験構造に関する概要である。 本作の舞台となる部屋には、かつて一人の少女が存在していた。現在、その空間に残されているのは、少女の「声」のみである。体験者は完全に暗転した部屋の中で、その声に耳を澄まし、視覚的情報を一切持たない状態で少女の存在を感知することになる。声だけを手がかりとして空間を探索し、少女の「実存」を探し出すことが体験の目的である。本作は、「見えないにもかかわらず、聞こえ、確かにそこにいる存在」を、体験者の身体的介入を通して立ち上がらせることを試みる。 体験は、以下の三部構成からなる。 第一部:出会い(イントロダクション) 体験開始とともに、少女の声が語り始める。少女は、自身の居場所を見つけてほしいと体験者に語りかけ、探索への導入がなされる。 第二部:少女を見つける 体験者は、空間内に配置されたスピーカーから再生される声を手がかりに、声の聞こえる方向へと移動する。探索の過程で、体験者が空間内の特定の位置に近づくと、装着しているインナーイヤー型イヤホンからも声が聞こえ始める(例:「もっと右」「そっちじゃない」など)。 体験者は、スピーカーによる空間的な音像と、イヤホンによる直接的な語りかけという二つの情報源を頼りに、空間内を行き来しながら少女の存在を追い求める。やがて、声は次第に空間全体へと増幅・分散され、同時多発的に発声されるようになる。その結果、少女の実存が明確にどこにあるのか判別できなくなり、このセクションは強制的に終了する。 第三部:電話に応える 部屋の端に置かれた黒電話が鳴り始める。体験者は受話器を取ることで、「残された声」との対話に入る。この対話は、体験者が返答を行うか否かによって内容が分岐する。対話を終え、受話器を置いた時点で体験は終了する。
Process
コアメンバーによるミーティングを開き、作品プロット・方向性・インスタレーションとして発表する意義・コンセプトを多角的に議論した。 その後、メンバー各自の専門性を生かし、以下のような担当の割り振りを行った。 ・現実空間の設計・構築 完全暗転に適した遮光処理およびオペレーションブースの設営 ・物理オブジェクトのインタラクション設計 黒電話を介したシステムへの音声入出力の設計 ・体験中の体験者位置情報の取得 スマートフォン、暗視カメラ、Pythonを用いた位置取得システムの構築 ・音響のインタラクション設計 Maxによるリアルタイム音響処理システムの設計・実装 ・音響素材の制作 DAWを用いた音声素材の録音、およびドローン、アンビエント、効果音の制作 ・広報および運営 ポスター制作、当日の受付対応、システムオペレーション全般 展示期間中に不具合が発生した際には即時にメンテナンスを行い、また改善点が明らかになった場合には、展示終了後も更新・改修を重ねた。
Collaborators
- 小嶋瑠記/ 制作・演出
- 上田尚史/ 技術
- 印南智樹/ 技術
- 光内理沙/ サポート・運営
- 武川裕和/ サポート・運営
Role
初期構想段階における演出企画に参画するとともに、音響素材を用いた動的な変化を可能にする音響生成の基盤システムを構築した。さらに、最終段階では、各処理層の接続およびそれらを統合的に制御するためのUI環境の実装にも携わった。